脊椎ストレッチウォーキングとは
兵庫県医師会と健康スポーツ関連施設連絡協議会は、共同で脊椎ストレッチウォーキング大会を県下各地で開催しています。
脊椎ストレッチウォーキング大会風景(2003年10月19日)
腹部を引き締め、脊椎をしっかり伸ばした姿勢を保持しながら歩くことで、バランスの良い筋力強化とともに、膝や腰への負担を軽減し、効率良く体脂肪を燃焼させる効果があります。
ウォーキングは体脂肪を燃焼させる有酸素運動として、手軽に出来る最適な運動です。
従来から「毎日、10,000歩」とか「ニコニコペース」など、歩く歩数や歩くスピードについてはよく知られています。
しかしそのフォームが悪ければ、効果的な運動にならないばかりか、関節障害を引き起こす原因にもなりかねません。
そこで、
- 正しい姿勢保持のための筋力強化
- 安全で効果的な有酸素運動
- 転倒防止
- 腰痛、膝関節障害の予防
以上のことにつながるウォーキングフォームのキャッチコピーとして「脊椎ストレッチウォーキング」を開発しました。
兵庫県医師会認定脊椎ストレッチウォーキング公認指導員とは
脊椎ストレッチウォーキングを広く正しく普及させるために、統一した基準の下で指導できる指導者を育成する事を目的として、兵庫県医師会と健康スポーツ関連施設連絡協議会では以下の講習会を随時開催しています。
- A級公認指導員育成講習会
- 指導者を対象に医学的な素養も含めた60分以上の講義が出来、かつ指導者向けの実技指導のノウハウ伝授が出来、大会開催の企画・運営・監督が出来る事。
- B級公認指導員育成講習会
- 一般参加者を対象に、20分程度の脊椎ストレッチウォーキングの理論説明が出来、かつフォームのチェックが正しく出来る事。
3大ポイント
歩き方
脊椎ストレッチウォーキングのポイントについて具体的に説明します。
- 腹部を引き締め、脊椎をしっかり伸ばした姿勢を保持しながら歩く
-
腹部を引き締め、脊椎をしっかり伸ばした姿勢を保持しながら歩くことによって、脊柱起立筋の負担を軽減することができます。
さらに普段の歩行ではあまり使われない、背中、腹部、腰といった部分の筋肉も刺激され、正しい姿勢保持のための筋力強化を図ることができるとともに、下半身中心の運動から全身運動に変えることができ、循環器の機能も活性化されます。
- 膝を伸ばし、足背屈をしっかりと意識して、踵から着地する
-
脚の振り出しの際に、膝をしっかりと伸ばすことによって、膝関節を着地の衝撃から守るとともに、膝関節周辺筋肉への負担を軽減することにつながります。
また、足背屈(足のつま先を反らした状態)をキープすることによって、転倒防止につながるとともに、膝や腰、脊椎までまっすぐにする効果も生まれます。
- 踵の着地と同時に”おへそ”をその上に乗せていく
-
踵が着地した際に、”おへそ”をその上に乗せていくようにイメージして歩くことによって、重心移動がスムーズになり、足首、膝、腰への負担を軽減することができます。
また、後ろ足の蹴りを自然なかたちで引き出すことにもつながります。
- 腕はバランス良く伸び伸びと振る
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腕振りは、歩くスピード(ピッチやストライド)によって変化します。
常にバランスを意識し、伸び伸びと振ることが大切です。
腕振りによって、上半身の筋肉運動が高まり、代謝量を増やすと同時に、肩周辺の筋力強化にもつながります。
また腰のローリング運動を引き出すためにも重要です。
- 視線はまっすぐ前に向ける
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視線を下に向けあごを引きすぎると、上背部の前傾により重心が前に移動し、下肢への負担を大きくします。
逆に上に向けすぎると、上背部の反り返りによって腰椎への負担を大きくします。
視線は、からだのバランスを整えるために非常に重要です。
視線をまっすぐ前に向けることによって、膝や足先をまっすぐ前に振り出す意識も高まります。
- 膝をまっすぐ前に振り出す
-
膝の動きは、つま先をまっすぐ振り出すためにも重要です。
内股になったり、外股になったりしないように、しなやかにまっすぐ前に振り出していきましょう。
効果
脊椎ストレッチウォーキングを継続することによって、次のような効果があります。
- 正しい姿勢保持のための筋力が強化され、日常生活における姿勢がよくなる。
- 足背屈(つま先を反らした状態)を意識して踵から着地することによって、前頚骨筋の強化が図れ、転倒の防止につながる。
- 膝をしっかりと伸ばし、踵から着地することが膝関節障害の予防につながる。
- 踵が着地した際に、"おへそ"をその上に乗せるように意識することで、膝や腰への衝撃を軽減し、膝関節障害、腰痛予防につながる。
- 腹部を引き締め、腕をバランスよくのびのびと振ることによって、上半身の運動量が増え、効果的な有酸素運動につながる。
- 体脂肪が効果的に減少し、シェイプアップにつながる。
- 筋肉量が増え、基礎代謝量が増す。これによって太りにくい体質がつくれる。
はじめる前に
これまでに定期的な運動習慣のなかった人は、事前にメディカルチェックを受けることをおすすめします
またウォーキングをしようとする日の体調が、以下のような場合には運動を中止するほうがよいでしょう。
- 安静時心拍数の測定 100拍/分以上のとき
- カゼ気味、睡眠不足、食欲不振、疲労感、胸がしめつけられるような感じのとき、動悸を感じるときなど
- 体温が37℃以上のとき
- 収縮期血圧(最高血圧)が160mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が95mmHg以上のとき
常に自分の身体と対話して運動をすすめることが大切です。
そして異常のある時には、注意して原因をさぐるようにしましょう。
- 【歩く時間帯】
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自分の日常生活の中でもっとも無理のない時間帯で行うようにしましょう。
しかし、食事直後や空腹時はさけるようにしましょう。
また夏季の炎天下での運動も控えた方がよいでしょう。
- 【水分の摂取】
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運動時に適度な水分補給をすることは、体温や心拍数の上昇をおさえ、疲労感をすくなくすることにもつながります。
運動中には、積極的に水分補給をするように心がけましょう。
ただし、一度に過剰の水分補給はよくありません。
- 【服装】
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運動しやすい服装であることが基本ですが、季節や気温の変化によって合わせて調整することが大切です。
暑いときには、汗を発散させるような通気性のよい服装が望まれます。
また日差しの強いときは、通気性のよい帽子を着用するようにしましょう。
寒いときには、保温性の高い服装を着用すると同時に、手や耳に対する保温も心がけるようにしましょう。
下着や靴下については、吸湿性にすぐれた素材のものを選ぶことが大切です。
さらに運動中に脱ぎ着をして体温調節ができるようにしておくことが理想です。
また運動中は、できる限り手に物をもたないで歩くことが望まれます。
持ち物がある場合は、ウエストポーチかリュックサックを使用するのがいいでしょう。
- 【シューズ】
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いいシューズを選ぶことが運動を継続して行うためには重要です。
シューズ選びでもっとも大切なことは、自分の足型にあっているかどうかです。
また、底にある程度の厚さがあり、足への衝撃が緩和されるものが望ましく、かかとが高かったり、底が薄く硬いシューズはよくありません。
衝撃吸収タイプのインソールを使用するのもよいでしょう。
また暗い場所で使用する場合は、安全対策として反射板や発光機器を使用するのも大切です。
- 【ウォーミングアップとクーリングダウン】
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ウォーキングに使用する筋肉をストレッチングや軽い体操でほぐしておくことが大切です。
特にアキレス腱やふくらはぎの伸展、足関節や膝関節、腰の屈曲、伸展、回転を行うことが効果的です。
クーリングダウンは、使った筋肉をほぐすのに有効です。
ウォーミングアップと同様に、ストレッチングや軽い運動をリラックスしながらゆっくりと呼吸を整えて行いましょう。
適切な運動量は?
望ましいトレーニングの強度、時間、頻度、期間については、1990年にアメリカスポーツ医学会が提唱したガイドラインがもっとも広く受けいられています。
それによると、運動強度は最大酸素摂取量の50~85%、あるいは最高心拍数の60~90%、時間20~60分、頻度3~5回/週ということです。
しかし、運動の効果が期待できる最低条件は、現在の日常生活の運動量を上回ることだといわれます。
つまり『身体を動かす機会を多くつくる』ことです。
日本人の平均的な労働をしている人の1日に必要なエネルギー量は、1,800kcalといわれています。
ところが、平均的な摂取エネルギー量は、2,100kcal、つまり300kcalを過剰摂取していることになります。
この余剰エネルギーを歩行によって消費するためには、現在の歩行数に約1,000歩プラスすることが必要です。
つまり男性9,300歩、女性8,300歩ということになります。
これだけ毎日歩くのはなかなか大変なことですが、日常生活の中で歩く機会をつくりだすことができれば、十分可能だと思います。
楽しみながら行えるように工夫してみましょう。
表歩数を増やすための工夫 例
- 歩けることの喜びをイメージする。
- いつも歩きやすい靴を履く。
- エレベータ、エスカレータにたよらず、自分で決めた階までは歩く。
- 歩数計をつける。
- 自家用車の利用を控え、電車やバスを利用する。
- イライラしたら軽く身体を動かすようにする。
- 身体活動を伴う簡単な用事(コピー、ファックス等)は他人にたのまず自分でする。
他